Dr. Mellar P. Davis, MD, FCCP FAAHPM is the Director of Palliative Care, Geisinger Medical Center since 2016. He has been chair of the Palliative Care Study Group of the Multinational Association of Supportive Care (MASCC) since 2007 and a board member of MASCC since 2010. He was elected as a fellow to the American Academy of Hospice and Palliative Medicine (AAHPM) in 2010 and has been Editor in Chief of Progress on Palliative Care since 2008. His present duties within the AAHPM consist of Associate Editor in Chief of PC FACS (Fast Article Critical Summary for Clinicians in Palliative Care).
He will become the Editor in Chief of FACSW.
http://www.sapporoconference.com/conference/2014/schedule/popup02.html
近年までPalliative oncologyは、患者とオンコロジストの間に存在する、がんを克服するという共通の希望によってしばしば導かれてきた。患者とオンコロジストの間のこうした希望は、治療に期待できる生存率の向上の過大評価、治療の目的や予後に関する議論の欠如、終末期においての積極的な治療に関する議論の欠如をもたらしてきたといえる。 希望を持つことが治療にもたらす効能を理解する医師は、患者の持つ希望に望みが薄いことを知りつつも、しばしば患者の家族が持つ儚い希望にも支えられ、患者が予後に対して望みを持つことを支持してきた。 患者は、近年においても緩和ケアと延命治療の力をしばしば過大評価し、自らの予後について不正確な理解を持つことがある。 医療品質・効率性研究機構(Institute for Quality and Efficiency in Health Care)は2012年、緩和療法の臨床試験の結果の多くは、患者を中心とした治療結果に基づかないものであり、二次的な効果のみを示すものが多いことを発表している。
近年において、特に2010年以降、palliative oncologyは急激に変化しつつある。その変化は、欧州臨床腫瘍学会 (European Society of Medical Oncology) が 、オンコロジーを統合した緩和ケアセンターを評価したことに始まる。2010年のTemel氏の研究は、緩和ケアはがん治療に早期から組み込まれるべきであるということを、重要な意味を持つ複数の研究結果および終末期における積極的な治療の減少をもって示した。緩和ケアは、終末期における生命の危機に対する介入治療から、一連のがんの治療の中に統合される、患者と医療従事者による協働作業に変容しつつある。緩和ケアのサービスは、こうした変化に伴って変化しなければならない。 現在は、オンコロジーを統合した緩和ケアおいて、いかに質的評価を行うかに関して力が注がれている。
私たちは現在、ゲノム、そして、ターゲットオンコロジックセラピーの時代に突入したといえる。この時代の変化が、治療の標的をがんの原発巣から、がん細胞の発生を促すドライバー変異へと変化させた。私たちはこの変化に対応することができるのだろうか。患者を中心とした治療の評価と、標的療法の結果の違いは計測されているのだろうか。アメリカにおいては、化学療法のコストの63%をターゲットエージェントが占めている。イールドが40%であるならば、次世代のシーケンサー技術を用いた変異の検出は、費用効果が高いといえるだろう。人口の5%以下にしか見つからない非常に稀な変異を探すことは、標的療法のコストが低いときに限って費用効果が高いが、標的療法は概ね高額であり、費用効果が高いとはいえない。大半の国において、医薬品のライセンシングは効能(生存率、または無増悪生存期間)に基づいて行われており、質調整生存年(QALYS: quality adjusted life years saved)に基づいた、増分費用対効果 (ICER: incremental cost effectiveness)に基づくものではない。オンコロジストは、治療の選択肢について意思決定する際、通常 ICERS は考慮しない。さらに悲惨なことに、医薬品の取得コストは承認後に引き上げられ、現代に生きる世代は大きな経済的な負担を抱えることになり、将来の世代に経済的な負担をもたらしている。患者家族の経済的毒性は、標的療法が現実世界にもたらした結果である。興味深いことに、家族の直接および非直接コストは、ICERの等式には含まれていない。 緩和ターゲット療法がより早期から導入されることによって患者がより長期に渡り生存することにより、経済的毒性はさらに深い問題となる。
Palliative oncologyの領域は、QOLの向上のための手法として、緩和ケアを高度ながん治療に早期に組み込む必要があり、これは、「早期」の定義付け、統合の開始基準、統合維持のための枠組みや経済的なサポートを必要とする。緩和ターゲット療法と緩和ケアが、患者の家族の経済状況にいかに影響するかについても、私たちは研究する必要がある。患者家族の経済的毒性は、将来のpalliative oncologyにとっての大きな障壁となるであろう。標的療法に要する費用については、ライセンシングに基づいて、標準となる上限(患者の支払意志、WPP: willingness for payers to pay) (50,000 または100,000 米ドル)を設けるべきである。我々は、適切なICERおよびWPPの決定に関して、製薬会社に責任を持たせるべきである。効果の低い治療の実施を減少させる、次世代の変異ドライバーのテストを奨励すべきでもある。今後は、医薬品のライセンシングにおいて、患者中心の治療結果も同様に重視されるよう求めていくべきである。